COLUMN

種類、歴史、特徴。軸流ファンの豆知識

ファンの種類

軸流ファンは言うまでもなく、様々な種類の中の一つです。その他「遠心ファン」「斜流ファン」「横流ファン」などが存在し、その中でも特にプロペラ型のものを軸流ファンと呼びます。これらのファンの違いは、その構造の違いにあります。プロペラ型である軸流ファンは、後ろから来た空気を軸にそってまっすぐ前に送り出すという構造ですが、送れる空気の量が多い代わりに圧力に弱いという弱点があります。

一方、遠心ファンは軸に対して直角に遠心へと空気が流れていきます。シロッコ型とターボ型と二種類が存在しますが、特にシロッコ型はその構造から、ダクトの換気扇などに用いられています。

斜流ファンはプロペラ型ですが、後ろからきた空気を斜め方向に分散して送り出します。斜流ダクトなどに用いられています。斜流ファンは、軸流ファンと横断流ファンのちょうど中間のような機能を持っています。

横断流ファンはクロスフロー式と呼ばれる形式をとっており、軸を横断して風が流れていきます。このファンは薄い板状の風を作り出すことができます。

これらのファンの使い分けを考える際、それらのもつ空気の流れの特徴を考えることも重要ですが、同時に必要な風圧や、風量、そして外風による圧力も考慮に入れる必要があります。ビルの高いところなど、風が強い場所に設置するとその力によって抵抗が生じてしまいます。

こうしたファンの種類は、あまり耳慣れない一方で、一般家庭でも見ることができます。電子レンジ、デスクトップパソコン、換気扇、エアーコンディショナーなど、冷却や換気が必要な場所では必ずこれらが用いられています。

鉱山で使われた送風機

軸流ファンは言い換えると、送風機です。先程までは現代において使用されている様々な種類の送風機を紹介しましたが、今度は歴史の中でどのように使われ、発展してきたのかについて見ていきます。

まず少し離れたところから考えると、そもそも風を動力として最初に用いたのは、帆だといわれています。エジプトでは紀元前2800年ごろからすでに帆を用いた航海が行われていたとされていますし、風車はフェニキア人が用いていた三角帆から発展したと考えられています。

それらに対し、歴史的に風力を人工的につくりだす非常に重要なものとして用いてきたのが鉱山です。鉱山では、坑道の奥深くに入り込む際、中に溜まった空気を入れ替えるために送風機は必須でした。とはいえ、そこに現在のような機械式のものが用いられたのはずいぶんとあとの、明治時代に入ってからのことです。その当時日本にはまだ送風機を開発する技術はなく、イギリスやドイツ、ベルギーなどから輸入されたものが主でした。

加えて忘れてはいけないのは、製鉄です。もののけ姫など、非常に有名な映画でも取り上げられていましたが、製鉄を効率よく行うためには送風が非常に重要な要素になります。鉄を1400度という高温で長時間に亘って溶かし続ける必要があるため、人工的な風を起こすことが古来より求められてきました。

映画の中で描かれていたような足踏み式の送風機は「ふいご」と言う送風機の種類で、日本では古来より用いられてきた伝統的なものです。一人でも操作可能なものから、数十人に踏み込むものまで、様々なタイプが存在します。ふいごは体積を変化させることで空気を送り出す仕組みになっており、わかりやすく言えば注射器のピストンのようなものです。鍛冶の仕事では足踏み式の他にも、差し込み式のふいごが長く用いられてきました。

そしてその後、送風機は流体力学の発展などとともにすさまじい性能発展を遂げ、現在に至ります。現在利用されている様々な性能の送風機は、こうした歴史の上に展開されています。

軸流ファンの特徴

最初の項目で、軸流ファンとその他のファンについて簡単に説明しました。では、軸流ファンそれ自体の特徴とはなんなのでしょうか。

一つ目の特徴は、遠心ファンなどと比べると小型かつ軽量にすることが可能で、さらに安定感が強いことです。遠心ファンなどは振動を抑えるための工夫が必要になる場合がありますが、軸流ファンの場合はその心配が少ないといえます。

二つ目の特徴は、効率の良さです。その他のファンに比べても非常に高い効率を誇り、そのことから発熱体の冷却などにもよく使われます。

三つ目の特徴は、はじめの項目でも触れましたが風量が多く、静圧(風を送り出す力)が低いということです。そのため、通常は効率よくエネルギーの送風を行うことができますが、気圧差が存在し、風が強いような場所では極端に性能が落ちてしまいます。

こうした軸流ファンの特徴は、ファンだけでなくジェットエンジンなどに用いられる「軸流圧縮機」などでも同じです。小さいわりに風量が多いため非常に効率が良いのが特徴です。

このように軸流ファンは小型でも大きな風量を得ることができるため、運搬や据え付けなどの取り扱いも簡単です。

BACK